東京地裁は、小沢一郎氏が政治資金規正法違反(虚偽記載)で起訴された事件で、小沢氏の元秘書で現国会議員の捜査段階で作成された調書の証拠調べ請求を、2月17日、却下した(朝日夕刊)。調書が任意性を欠くとされたのである。
刑事裁判では、捜査段階で警察官・検察官に容疑者や参考人が供述した内容を調書にして、証拠調べ請求され、その調書が証拠として採用されることが多い。しかし、それが証拠となる前提として、容疑者・参考人の供述が任意に、即ち自由意思で行われたことが必要である。このように証拠にできる資格を証拠能力という。この自由意思が、脅迫や誘導などで捻じ曲げられると、その調書は任意性を欠くとして証拠能力を否定されるのである。
今回の東京地裁は、この議員が取り調べ内容を隠れて録音していたことから、取り調べの様子が発覚し、その取り調べが違法・不当と判断されて、証拠調べ請求が却下された。
取り調べは密室で捜査担当者と被疑者・参考人が1対1で調べられるため、違法な脅迫や虚偽の利益誘導などが行われ、その結果、冤罪を生みやすいと予てから弁護士界から批判されてきた。そして、取り調べの録画による事後の公開・検証が可能なようにすべきであると主張され、いわゆる「取り調べの可視化」が求められ、現在その方向に大きく司法界は動きつつあるのである。
今回の決定は、その流れを加速するものであろう。