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判例解説インデックス

2011.05.31(火)

判例解説「卒業式の君が代斉唱に起立を強制するのは合憲」

起立斉唱強制は間接的制約に過ぎない

最高裁は、30日、卒業式の君が代起立斉唱行為を拒否した元都教員を、そのことを理由として定年後の嘱託を拒否した都教育委員会の行為を適法とした。

元都教員は、「日本の侵略戦争の歴史を学ぶ在日朝鮮人、在日中国人の生徒に対し、『日の丸』や『君が代』を卒業式に組み入れて強制することは、教師の良心が許さない」として起立強制は憲法の思想良心の自由(憲法19条)に違反すると主張する。

これに対して、最高裁は、国旗・国家への起立斉唱行為が思想良心の自由に対する間接的な制約となることを認めつつも、その外部的行為に必要性・合理性があれば憲法上許容されるとした。卒業式などの儀式的行事は、教育上の行事にふさわしい秩序を確保して式典の円滑な進行を図ることが必要であるとする。また、公務員の全体の奉仕者性もその根拠とする。

私自身は、この最高裁判例に賛成することは出来ない。

思想良心への間接的な制約と最高裁は主張するが、私自身は間接的とは考えない。「日の丸」を前にして起立を強制し「君が代」を歌うことを強制することは、「日の丸」「君が代」が過去の日本の侵略戦争を象徴するものであると考える者にとっては、直接的な思想良心への制約であって、これを間接的とみるのは技巧を弄した詭弁とさえ感じる。「日の丸」「君が代」を敬愛することは当然、思想良心の自由である以上、それに対する表敬を拒否するのも思想良心の自由である。これを職務命令で強制することは、憲法19条に違反する疑いが濃い。歌いたい者が歌えば良いし歌いたくない者は歌わなければ良いのである。それが思想良心の自由の尊重である。それでは卒業式の儀式性が守れないという向きもあるようだが、だったら君が代斉唱を省けば良いし、君が代を歌わなかったから卒業式に厳粛性がなくなるなんてことは考えられない。儀式性・厳粛性を保持する手段は幾らでもある。「日の丸」「君が代」が絶対的に必要な行事ではないのである。それを無理やり卒業式その他の学校行事に持ち込んで、職務命令で強制するのは、「日の丸」「君が代」への尊敬を強制するに等しい。補足意見でも「日の丸」「君が代」に対しては意見が分かれていることを認めているのだから、「直接制約」か「間接制約」か等の技術的議論で蹴って欲しくなかったというのが私の意見である。