著者のアメリカにおけるシンクタンクの定義は、「政策研究を行い、質量両面からアメリカ政治をサポートする、政党に属しない非営利団体の総称」ということである。代表格は、ブルッキングス研究所、AEI、CSIS、ヘリテージ財団など。ホワイトハウス、省庁、議会が政治の舞台の主役なら、シンクタンクは政治の舞台を支える黒衣の存在だそうである。
アメリカの公務員制度ないし官僚制度は、いわゆる猟官制(スポイルズシステム)を採用している。猟官制とは、政権が交代すると、新たな権力者の意思に応じて官僚の首を挿げ替える制度である(これに対して政権に関係なく公務員を維持するのはメリットシステムと呼ぶ)。
この制度が、いわゆるシンクタンクの存立基盤を成していることになる。すなわち、共和党の大統領が誕生すれば、政党に属しないとはいえ、政策的に共和党に近いシンクタンクから長官が抜擢されるし、逆に民主党の大統領が誕生すれば、政策的に民主党に近いシンクタンクから入閣することになる。その辺は、この本を読んで欲しいが、日本の「○○研究所」といったシンクタンクと呼ばれている集団とは可なり趣を異にする。政府の要職にあった人が、大統領の交代により下野してシンクタンクに迎えられ次の機会を待つことになる。この辺りの政府の要職とシンクタンクへの所属の往来は「回転扉」と形容されている。
行政権、立法権、司法権、メディアに続く「第五の権力」とまで言われる位、その影響力は大きくなって来ているのだそうである。
アメリカの権力構造を垣間見ることができて、大変興味深い本である。