本書の新味の一つは、「占い」や「心霊現象」など誰が見ても「非科学」と思う分野(著者の分類では「第1種擬似科学」)と「統計」その他の誤魔化しにより科学を装おう分野(「第2種疑似科学」)の他に、「第3種疑似科学」を設定したことだろう。「第3種疑似科学」とは、「『複雑系』であるがゆえに科学的に証明しづらい問題について、真の原因の所在を曖昧にする言説で、疑似科学と真正科学のグレーゾーンに属するもの」とされる。「第1種」が迷信の類であること、「第2種」も科学の衣を被った虚偽であること、の2種類は誰でも思いつくが、第3種とされるものについては、私は考えが及ばなかった。
特に、第3種については、著者は「予防措置の原則」を唱導するのだが、それはそれなりに説得力は持つだろう。
「ただの迷信」(例えば血液型A型は几帳面)「科学的装いの迷信」(たとえばマイナスイオン水は体に良い)は、「ほんとかよ」「ホンマかいや」と一寸マジで疑えば、疑問の回答は全く出てこないので、その疑問さえ持てば陥穽には落ちいらない。しかし、「第3種」で、「人類排出の二酸化炭素が増えたので地球温暖化が進んだのか」「地球温暖化が進んだので海水内などの二酸化炭素発生が増えたのか」は、専門の科学者の間でも確たる正解(と言っていいのかな)は未だ出ていないそうである。そこで、著者は「予防措置の原則」を推奨する。「じゃ、この答えが出るまで二酸化炭素の排出を無制限・無規制に続けてよいのか」として、「予防的に二酸化炭素の排出を規制すべきではないのか」ということになる。そして、このことを地球温暖化の根拠が人類排出の二酸化炭素だと証明できない限り二酸化炭素の排出規制に反対すること、を「第3種の疑似科学」と断ずるわけである。
著者も指摘するとおり、この辺りは「グレーゾーン」である。二酸化炭素規制反対論者を、「お前は非科学的だ!」と断定するのは早計だろう。でも、もし反対論者の言い分が科学的真実だったら取り返しがつかないじゃないか、だから予防措置だよ、というのは成るほど納得が行く。
ただ、第1種、第2種の擬似科学信奉者には、余り期待できないよね。この本に目を留めることも勿論よむことも。