久しぶり(多分初めて?)に児童文学である。中一の長女と小四の弟のある夏休み。ありきたりの表現だが懐かしい物語。少女と弟との一家(一族と言った方が良いか)が、夏休みを経て穏やかに変化していく。実母は既に亡くなっていて、実父は児童文学者兼出版社経営。実父は子供たちに毎日一話創作童話を聞かせる約束をするが、外国出版社へ版権の売り込みに行かねばならず、夏休みは手紙で毎日一話の童話を送る。この間、子供たちは東北のおばあちゃんの家へ行く。おわかりのように、一家の本筋の話に、毎日一話の童話が重なり短編集の味わいも楽しめることになっている。
登場人物の配置と主人公の心の葛藤からして、3分の1も読めば結末は容易に想像できるのだが、そんなストーリーを追うよりは毎日一話の童話を楽しみ、それが本筋とどうかかわるか等を楽しむのが良いだろう。
一話ごとに和田誠氏の童話の表紙と、本筋の挿絵が挿入され、これもこれで楽しい。
日ごろギスギスしたミステリーや社会評論の様な本ばかり読んでいても疲れるので、こんなホンワリした小説を読むのも楽しいし、それはそれで奥深いものがある気がする。
小学校高学年くらいから読めるだろうし、大人が読んでも私の様に楽しめる。お奨めする。