筆致は論理的で客観的だが、情熱の書である、と言えば良いか。反貧困という書名の「反」には反戦などと同様、強い怒りと戦う決意が漲っている。
筆者は、日本の「貧困」の現状を提示し分析し、怒り訴えかける。
確かに、ここで提示される日本の貧困の現状は凄まじい。日本には三層ある筈のセイフティネットが今や綻んでいるというのである。すなわち、雇用のセイフティネットであった正規雇用が非正規雇用により浸食され、社会保障のセイフティネットが失業保険が機能しないことにより綻び、公的扶助(生活保護)のセイフティネットが「水際作戦」で抑えられる。その結果、「ネット難民」やホームレスにまで「すべり台」を滑って落ちることになる。「格差社会」とか「ワーキングプア」とか最近マスコミで目立つ用語に、ここまでの背景や現実があることについては、中々突っ込んでは考えない。例えば日ごろ私は多重債務問題を仕事として取り組んではいるが、必ずしも貧困の具体化としては捉えて来なかった。認識の甘さを反省する。
もし自分が生活保護を受けることになったら幾らの保護費が出るのか余りに皆が知らなさ過ぎるという指摘は正にその通りだろう。その様なことが常識となって初めて最低賃金や社会保障なども理解できるのだろうから。
それにしても、筆者らの活動には感動する。私は以前、生活保護裁判に関わっていた時期もあったが、最近遠のいているのを後ろめたく思う(ただ、色々忙しいので中々復帰できる状態にないが)。いろいろ考えさせられる本であった。