ご存知、ディック・フランシスの競馬ミステリー・シリーズ。このシリーズ何冊くらい発行されているのかは知らないが(多分数十冊)、殆ど主人公もストーリーも異なる中で、唯一シリーズになっている片腕の名探偵シッド・ハーレーを主人公にしたもので、4作目だそうである。一時期このディック・フランシスを読み漁った時期があって、中でも片腕の名探偵は印象に残るものであったが(ストーリーは全部忘れた)、今回、改めて登場という訳で嬉しい。
私は競馬はやらないので、日本の競馬界を知らないし、イギリス競馬界は益々わからない。日本の競馬は平面で競争するのに対し、イギリス競馬は障害物競走が主流らしいことを本シリーズで知った。また、イギリスでは私的な「賭け屋」なる私的商売がなりたっていて、それが重要な要素になっているようだ。
本書は殺人事件から始まり、その捜査を「調査員」シッドが行なう。なぜ「私立探偵」と呼ばないのかアメリカ小説ではなくてイギリス小説だからか、その辺は私の知識ではわからない。DNA鑑定やインターネットギャンブルなど、現代的な小道具が結構でてくるが(ディック・フランシスは相当高齢の筈である)、主人公は、著者特有の自らに降りかかった困難を独自の勇気で立ち向かう者である。
筋立て自体は、それほど難しい話ではなく、アッと驚くドンデン返しがある訳ではないので、ミステリー自体としてはそれ程高得点を上げられるわけではないが、長いブランクのもと、久しぶりに旧友に会えたという楽しさで、ま、よしとしよう。