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メディア評インデックス

2009.03.10(火)

スパイと公安警察 実録・ある公安警部の30年

泉修三

本欄の読者であれば私がスパイミステリーの愛読者であることは先刻ご承知と思うが、その伝で本書を購入した。昔、フリーマントルというイギリスのスパイミステリー作家が書いた「CIA」や「KGB」のノンフィクションを面白く読んだ記憶があったので、本書でも日本の公安警察がどの様になっているかの暴露話が期待できるかもしれないと思ったのである。

しかし、残念ながら副題の通り「実録・ある公安警部の30年」であって、日本の諜報・防諜組織がどうなっていて、どういう人員構成で、どのような機器を備えているのか等のハードな面は殆ど分らず、殆ど経験談に終始し且つ尾行・尾行・尾行の話が殆どである。

著者は、略歴からして江戸っ子らしく文章は歯切れが良いが、些か自慢話も鼻につかないでもない。手の内は明かせないのだろうが、スパイの高等テクニックだとか著名な公安事件の暴露話など、スパイオタクの私の興味本位を満足させてくれる部分は余りなかった。

にしても、30年からの公安畑である。それなりに年季の入った話もあり、面白くなかった訳ではない。ただ、本の帯の「KGB、CIA、北朝鮮工作員…を日夜追いかけるはみ出し捜査官」という宣伝文句に釣られて読み出すと、少々期待は外れるだろう。

一警官の半世紀として読むのが正解だろう。

P.S.映画「007癒しの報酬」は余り面白いとは思わなかった。


泉修三<br />バジリコ株式会社
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