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2009.01.28(水)

赤塚不二夫のことを書いたのだ!!

武井俊樹

標題通りの本だが、赤塚先生が御存命中だが脳内出血で昏睡中・意識不明のときに書かれたものなので、追悼・追憶の色が濃い。その意味では赤塚先生がお亡くなりになった現在でも十分書籍としての体をなしている。

著者は小学館の編集部に勤務し、少年サンデーの「おそ松くん」など赤塚先生を30年も担当されたそうで、その間の赤塚先生との思い出話である。

正直なところ、私自身は赤塚マンガをギャグとして本当に面白おかしいと思った記憶はない。ギャグのセンスというかユーモアのセンスが違うのだろう。ただ私が子供の頃の赤塚先生は絶大な人気を誇っており、確かにイヤミの「シェーッ」は私自身やった記憶があるので影響されなかった訳ではないのだが。

どちらかといえば、タモリさんの発掘者(変な言い方だが)で、とにかく面白いことは何でも面白がってやる方だという赤塚先生のイメージが強く、マンガそのものよりはマンガ以外のパフォーマンスの方が記憶に残っている。

著者は、赤塚先生と一緒に酒を飲み、赤塚先生のパフォーマンスに心から付き合った方のようで、笑えるエピソードが沢山出てくる。しかし、赤塚先生が売れっ子マンガ家からやがてアルコール依存症・脳出血に至って植物状態が長く続き(その間に奥様が先に逝かれる)遂に昨年亡くなられたという事実が頭にあるものだから、どんなハチャメチャなパフォーマンスの話が出てきても、どこか悲しい。また終戦直後の色合いがやや残る書き方なので、その意味では大げさに言えば文化史的に興味深いという側面もある。特に赤塚先生も著者も大ファンだったという美空ひばりさんを語るときの熱っぽさは時代を感じさせずにはおかない。

いわゆる団塊の世代の方々には懐かしい記述が多いと思う。その年代の方々にお奨めしたい。


武井俊樹<br />文春文庫
文春文庫
619円+税