7月8日、福岡地裁は、殺人事件遺族の求めた犯罪被害者給付金の支給を、7年の期限切れとした県公安委員会の裁定を取り消した(朝日9日朝刊)。
訴えていたのは、父親が殺害されたため、遺族給付金の申請をした女性で、県公安委員会は申請権が消滅する除斥期間(7年)を過ぎているとして不支給の裁定をした。この裁定を不服として女性が提訴したもの。
福岡地裁は、父親の死亡から7年後に申請権は消滅するが、当時、父親の死亡診断書がなく、また殺害犯とされる被告人は殺害を否認しており、仮に申請があっても県公安委員会は裁定ができなかったと判断。しかし、このような事情の下で申請権が消滅すれば「法の趣旨、正義に著しく反する」と地裁は判断した。その上で「犯罪行為による死亡を知った日」を殺人事件一審判決の05年10月5日とし、申請できなかったことがやむを得ない特別な事情が終わった時点から6カ月以内は除斥期間が過ぎたことにならないとする民法の規定や判例から、女性の申請権は消滅していなかったと結論づけた。
法律上の期間制限は、時効が日常用語化するくらい有名であるが、似たような制限に「除斥期間」というものがある。時効は、債務者が時効を主張したりしなかったり加害者の知不知で時効が中断したりしなかったり等不確定な要素を含むが、除斥期間は、それより厳格なもので、中断を認めず一定期間が来たら権利は当然消滅するという扱いがされる。しかし、その様な厳格な姿勢を貫くと却って不正義な事態を招くこともあるので、例外的に判例で救済することがある。本件はまさにその救済事例と言える。