休日に政党の機関紙を配布したとして、国家公務員法違反(政治的行為の制限)の罪に問われた元国家公務員の男性の控訴審で、東京高裁は、3月29日、罰金10万円、執行猶予2年とした一審東京地裁判決を破棄し、無罪とする判決を言い渡した(29日朝日夕刊)。
国家公務員の政治的行為については、1974年、当時の社会党のポスターを掲示・配布した郵便局職員が有罪となった最高裁のいわゆる全逓猿払判決がその後も踏襲され、行政の中立的運営や国民の信頼を保護すべきとして刑事罰に付されて来ていた。その流れを今回、東京高裁が一部覆した訳で、今後の最高裁の動向が注目される。
東京高裁は、猿払判決の大枠を維持しつつも、この事件を詳細に検討した上で無罪判決を言い渡したもので、更に「付言」として、国家公務員の政治的行為の禁止が広汎に過ぎる嫌いがあると疑問を呈する踏み込んだ言及がなされた。国家公務員法の運用にまで一般的に踏み込んだ形で、読みようによっては立法論に言及としたとも言えなくもないので、その意味でも異例ということが出来る。
政治活動の自由は、憲法上、表現の自由の一内容をなすと解され民主主義国家における重要な国民の基本的人権とされているが、この自由を制限するにはより制限的でない他の採り得る手段でなされる等、憲法上最大限の尊重を要する。その意味で、今回の東京高裁の判決は学説の趨勢に沿った画期的なものということが出来る。この事件の最高裁判決が注目される。