最高裁は、3月15日、インターネット上で虚偽の内容で企業を中傷し名誉毀損罪に問われた会社員に罰金刑を確定させた(朝日17日付朝刊)。
名誉毀損罪については、内容が正しいと信じたことにつき確実な資料や根拠に照らして相当な理由があると認められるときはこれを罰せず、またそう信じるのが当然と思われるときは名誉毀損の故意がないとして、罪の成立を否定する判例が確立している。
新聞社やテレビ局などの報道機関が取材を重ねて報道内容が真実と信ずるにつき相当な理由があると認められる場合は名誉毀損罪が成立しないとして表現の自由との調和を図って来た従来の立場が、個人の発するインターネット上の発言にもその立場が維持されるかで、1審は個人の発言は信頼性が低いし反論が容易である等を理由に個人が萎縮することなく情報や表現の自由な流通を保護すべきという立場から会社員を無罪としたのに対し、高裁・最高裁は従来の立場を崩さなかったということである。
これは、すなわち個人であってもインターネット上で公のことについて発言する場合には、それなりの責任が求められるということである。匿名性を良いことに無責任な発言が横行するインターネット上の言論に警鐘を鳴らした判決ということが出来よう。