表題通りマンガで描かれた赤塚不二夫伝である。
赤塚先生と作者とは50年来の交流があるのだそうで、赤塚先生に対する敬愛というか友情というか、その深い思いは十分伝わって来る。ただ正直なところ、「伝」としてみたときはイマイチかなぁという感じ。赤塚不二夫先生は確かに天才だと思うので、その天才の天才たる所以を身近にいた作者にもっと展開して欲しかったという気がする。漫画家を志したことのある人間なら知らない者はいないと思われる「トキハ荘」(赤塚先生はじめ石森章太郎先生、藤子不二雄コンビ先生、つのだじろう先生その他錚々たるメンバーが生活していた)のエピソード、タモリさんとの交友その他のエピソードも、それ程目新しいものではない。楽屋落ち的な交友録が沢山語られるが、赤塚先生ご自身に対する切込みも、遠慮があるのか何か踏み込みが浅い気がする。
多分、私がイマイチと感じる一番大きな理由は、絵である。作者ご自身が自嘲気味にご自分の「絵は下手」と書いておられ常識的には謙譲の美徳的発言ではあるのだが、ギャグマンガのタッチではあっても、も一つ何かノリきれないというか。数年前、赤塚不二夫展を観に行ったが、赤塚先生の原画はうまいと私は思ったのだが。天才ギャグマンガ家赤塚伝を描くのに最も適した表現手段である筈なのに、文字が多すぎるのか、元々のデッサン力に難があるのか。いずれにしても、もっと絵で展開して欲しかった気がする。尤もそれをやれば、この厚さには納まらなかっただろう。
ちなみに写真の「笑わずに生きるなんて」という自叙伝は、昭和53年の単行本を昭和59年に文庫化されたものである。
赤塚先生は、現在かなり重病の生活を強いられていると聞く。アル中治療や癌治療の果てに、今は脳内出血か意識がないという記事を読んだが、大丈夫なのだろうか。