仏教者と物理学者という異質な存在が時代を超えて対話するという、フィクションを交えた構成になっている。
物理学が究明する宇宙の構造・法則が、仏教(空海の唱える密教)の曼荼羅に酷似するという見方である。この観点は著者が唱えだしたのか既に多くの指摘がなされていたのか私自身はよく知らないが、何となくその様な意識は仏教書を何冊か読む中で幼稚な形ではあるが私自身の中に芽生え始めていた。
外界と截然と区別された自我を宇宙に対立させる西洋的思考方法が限界に来ていること、すなわち自我は宇宙を取り込み宇宙は自我を取り込む中で、人間対自然という対立構図は止揚されなければならないこと(少々私の柄に合わない要約の仕方をしてしまったが、ご容赦願いたい)、そうでなければ人間が自然を浪費し尽くし地球環境の悪化が加速され人類の未来は危険であること、が仏教者と物理学者の経歴・業績の対比と会話で語られる。
いずれにしても昨今の異常気象を見ると、地球温暖化の影響だろうと素人でも考えざるを得ず、人間の生活様式を根本的に変えないと人類の滅亡は早まると思われる。宇宙物理学からすれば地球はいずれ消滅するのだから、他の天体にでも移住できない限り(その可能性も低い)、人類もいずれ滅亡する運命にある、何億年の後だとしても。だとすれば限りある地球を大切にするしかない。
物理学が宇宙の法則を解き明かし、仏教がその宇宙内で生きる知恵を教えてくれる、という形の本と考えてよい。