痛快な本である。小泉首相はじめ与党・野党・経済界その他の日本国民をナデ斬りにする。批判は一々的確で、私が感じ考えていたことと殆ど同じで溜飲が下がる。著者のお二人の対談とそれぞれの文章が収められているが、お二人の対談にフェミニストの論客として知られる上野千鶴子東大教授が加わり、勢い止まらず当たるを幸いなぎ倒し、二世・三世の政治家・経済人(作家も)は形無しである。
辛さんは、大分昔、「朝まで生テレビ」か何かで始めて見たとき(最近はお出になっていないような気がするが)、凄い女性がいるなと思ってそれ以来ファンである。佐高さんは書き物も面白いが、一度「自由の森大学」での講演を聴いて、それも面白くて、やはりファンである。
「佐高 アメリカのイラク侵攻なんて、まさにそれだからね。
辛 マーケットが拡大できるから、よその国に入っていく。だから、アフリカが飢餓で苦しんでいても、資源がなきゃ見向きもしない。人間的な感覚を持っていればそれはできない態度だけど、人間的な感覚がないから、必要でないところは無視して、必要なところは人を殺してでも入っていく。
それが経営の基本ですよ。
佐高 アヘン戦争だって、茶葉の貿易のためにイギリスが仕掛けた戦争だものね。清国の国民をアヘン中毒にしてでも金が欲しいっていうのが動機だった。
辛 だから、資本主義経済は人を殺すんだという認識をしっかり持っていなければならない。人を殺す枠の中にいて、それをいかに暴走させないようにするかと努力するのが労組をはじめとした労働者の役目なのに、今はそれができていない、社蓄だから。
佐高 そして、経済がその論理で突っ走れば、必然的に勝ち組、負け組が生じるわけだよね。
辛 当たり前じゃないですか。弱肉強食ですよ。
佐高 それを救うのが政治の役目なんだよ。
辛 そうです。弱者救済ね。
佐高 ところが小泉、竹中たちは、その逆に、弱肉強食を推し進めている。これは政治ではない。」
面白いのだが、実は面白がってばかりではいられないので、例えば
「辛 その国(日本)はどうなりますかね。
上野 それは滅びるでしょう。
佐高 はっきり言うね(笑)」
ということなので、実際、滅びるしかないのかという気がして来る。何とかしなければいけない。