私は「ウルトラマン」に熱中した世代より僅かに上の世代だと思う(むしろ前の「ウルトラQ」の方が印象深い)。だから、初代「ウルトラマン」までは何とかついていけるが、その後の「ウルトラセブン」以降の代々の「ウルトラ一家」になると、殆どテレビで本気で観た記憶がない。ただ、テレビシリーズではなく、ゴジラに始まる怪獣ものの映画シリーズは熱中して観た時期があるので、その意味で、怪獣に関して本書は私にとって楽しい記述が沢山ある。特に日本の特撮映画の神様の様な円谷監督を戴く円谷プロは、ウルトラマンを誕生させる以前に監督が東宝ゴジラ特撮の産みの親だから、ゴジラ誕生ないし怪獣誕生秘話としても読める。
特撮映画は、実写部分担当の監督と特撮部分担当の監督とがおられるのだそうだが、著者は実写部分を担当する監督として特撮監督とは綿密な打ち合わせをし、その仕掛けも重々ご承知である。成功談もあれば失敗談もあり、舞台裏を観る気持ち。
特に私が楽しかったのは、怪獣の縫いぐるみに関する幾つかの章である。いまや映画ではコンピュータグラフィック全盛の時代で、怪獣が縫いぐるみで演じられる牧歌的な特撮はテレビで時折観られる位であろう。この縫いぐるみ怪獣は、変な言い方だが大変人間臭く(当たり前だ)、ちゃっちいが懐かしい。その懐かしさに比較するとアメリカ製CGのゴジラを観たときは違和感よりも失望感の方が強く、ゴジラが愛すべき存在だったのは縫いぐるみだったからだと改めて気付かされた。本書では、その縫いぐるみ怪獣がどの様に発案され製作され演じられるかがよくわかって嬉しくなってくる。劇画チックな挿絵で、怪獣や工程が説明されるのも嬉しい。
「ウルトラ」シリーズに熱中した経験がおありの方にはお奨めの一冊である。