単行本のときは「うたう警官」という表題だったそうである。ここで「うたう」というのは隠語で、「白状する・吐露する」という意味である。この小説では、北海道道警の腐敗を「うたう」という意味で使われる。
北海道警察本部勤務の女性巡査が他殺体で発見され、同僚の男性警官が犯人と断定され、その男性警官がシャブ中で拳銃を所持する危険人物で、射殺命令を付して手配される。その男性警官を無実と信じ射殺を回避するための活動を同じ道警の警部補が開始するというのが、本書の筋立てである。確かに北海道警察の裏金は何年か前にマスコミで騒がれた記憶があるが、それを一つの題材にし、一方で北海道警察の不祥事警察官の実話もモデルにされたということである。
私は札幌には行ったことがないが、札幌が舞台となっている。札幌や北海道のローカル色が盛り込まれているのかと言われると、地名以外はよくわからない。別に舞台は他の地域でもかまわなくて、ストーリー展開と登場人物がやはり主であると言える。
婦警殺害の犯人探しと同僚警官をいかに射殺命令から守るかというサスペンスとが二本柱である。犯人探しの推理自体は、それ程目新しいものではないが、サスペンスの盛り上げ方は後半特に最後辺りで最高潮に達する構成となっており、そこまでに何が起こるか起こらないかという期待を持たせ、最後まで読ませる。
警察組織の腐敗を描いた小説と言えば言えるが、少々現実離れしているかな、という気がしないでもない。ただ実話がモデルなので、こんなこともありかな、と思いながら読んだ。