題名どおりのストレートな内容である。運転士が、電車の構造や仕様について、電車の走る軌道(レール)について、電車の停まる駅について、電車の運転そのものについて、電車の運転について殆ど網羅的に語る。運転士は国家資格の免許証が必要だそうだが、国家試験のための教科書の内容はこういうものではないかと思わせる(教科書は多分もっと分厚いか何冊もあるかするのだろうが)。
本書のコラムによると、運転士の免許証は個人に与えられるので、鉄道に在職していることとは関係ないとのこと。だから、個人的に電車の運転士の免許を取ることは可能ではあるが、運転士養成の設備と人材を持っているのは鉄道会社のみであり、部外者を受け入れてくれるかどうかは「交渉次第」だそうである(個人の交渉で養成所に入れてくれる可能性はまず皆無でしょうね)。
叙述は何のけれん味もなく、プロらしくストレートに語られるので、面白おかしいという部分はないが、日ごろ殆ど何も考えずに電車を利用しているので、その無知が啓かれる目からウロコの叙述が随所に見られる(気付かないお前がアホやという非難には甘んじざるを得ない)。例えば、電車の運行の大半が惰行運転だそうで、何か常時エンジンかモーターで動いていると思い込んでいた私はビックリした。確かにあれだけの重量の機材は最初に起動すれば(起動・加速化を力行というのだそうである)、あとは車輪のころがりで動いて行けるだろう。なるほど。
けれん味のない叙述が続くが、例えば
「(電車の)底部の(レール面から)75mmにレールの高さ・タイプレートの厚さ・枕木の凹みを加えると車体の下に約300mmの隙間ができる。もちろん、もぐりこんだりしてはいけない。」とか「(駅舎の)屋根の部分は車両限界から200mmを空ける。…。アクション映画のように走行中の屋根の上に人が乗れるスペースはない。」など、真面目な講義をしている先生の一言がたくまざるユーモアを醸し出す部分もある。
モーターや電気系統の説明は、文系の私には少し疲れるが、その他は見慣れた光景を素に直感的にイメージできるので、ほぼ理解できるし、大変楽しい。