中島らも氏は、朝日新聞に連載していた「明るい悩み相談室」で初めて名前を知り、その捻りの利いた回答に思わず笑ってしまうことが多く、以来そのコーナーのファンだった。ただ、本来は中島氏は作家で(という言い方は不正確らしいが)、日本推理作家協会賞も受賞したりしておられたのだが、未だに小説の方は読んだことがない。
この本は、中島氏がコピーライター時代につくった「かねてつカマボコ」の宣伝ページを集めたもの(のよう)である。本の半分は余り上手とは言えないマンガが占める。このマンガは、コピーを切り貼りしたとしか思えない全く同じ造りで、若干の加筆で表情が表現される「てっちゃん」と「てっちゃん親父」の対話がメインである。全く同じ顔の造りであるから、どこか人形劇を見ている気になるが、メインは対話であって、その対話が笑える。漫才のノリである(引用したいが、画と一緒でなければ意味がないので止める)。人によっては、どこが面白いのというかも知れないタイプの笑いが結構あるが、その辺は人それぞれで何とも言えない。
後半はエッセイで活字だけだが、これも笑える。例えば「『あいうえお』の謎」の節では、
「が、問題は『え』の横の列なのだ。
『えけせてね』と『へめえれえ』の二つはどう考えても変テコだ。
『おこそとの』などの持っている、やんごとない高貴さに較べて『へめえれえ』は人をバカにしているとしか思えない(もっとも『ふむゆるう』はかなり下品だが、これも一種の野卑なユーモアとし解して許してあげることにする)。
というわけで『へめえれえ』が改心しない限り、許すつもりは僕にはない。」
私などは、こういう文章を読むと笑ってしまうのだが、「どこがぁ?」という方もいるだろうことは想像できる。それはしょうがないと思っている。
上記の引用文で笑った方には、お奨めの本である。