著者は東京新聞論説委員。中国ウォッチャーというか現代中国がご専門のようである。
ここで描かれる或いは分析される現代中国の政治過程は、これが事実だとすれば驚きである。
中国は普通選挙が実施される政治体制ではなく中国共産党1党制だから、権力変動が殆ど派閥ないし人脈で起こるということらしい。その派閥も、「上海閥」「共産青年団」「人民解放軍」あるいは「有力幹部の子弟」ということらしい。
どうも党の中央委員や政治局員といった辺りと、国家の役職‐主席などと、党と国家との関係が今一整理できないし、地方の党幹部に就任するのが出世の足がかりらしいのだが、その選出過程も良くわからない。どうも任命制に見えるのだが、そうなると幹部の胸先三寸ということになりそうである。もう少し本書を精読すれば良くわかるのだろうが、いつもの癖で殆ど読み飛ばしに近い読み方をしたので、頭が整理できないのだろう。
旧ソ連では、党幹部・上級官僚と一般庶民との間には著しい生活格差があり、高級な生活を保障されている階層を「ノーメンクラツーラ」(新しい階級)と呼ばれ、無階級社会が建前の社会主義国家の現状が厳しい批判の対象にされていた。
どうも、現代中国でもこの経済格差が大きく拡大しているそうである。特に農村と都市との格差が著しく、これが現代中国の国家運営の大きな課題だそうである。
経済的にも軍事的にも現代の大国となった中国は、その国内問題は容易ならざる局面にあるらしい。
反日感情の分析も私の知らない側面から行われており、大変新鮮である。著者は、親中的でも反中的でもなくリアルに中国を見ているという感じがする。その意味で、特定のイデオロギーによる分析ではないと思われるので、現代中国を知る上で好個の参考書ということが出来るだろう。