判例解説「福岡地検が検察審査会の起訴相当に応じる」
福岡県警が08年3月に強姦未遂容疑で逮捕したが、福岡地検が不起訴(嫌疑不十分)とした件について、福岡第1検察審査会「起訴相当」との議決を出し、地検が再捜査していた元警部が起訴された(朝日25日夕刊)。
犯罪の嫌疑をかけられた者を、裁判所に起訴して刑事裁判にかけるかどうかの権限(公訴権)は、検察官が独占している建前である。検察官が警察段階・検察段階の捜査を総合して起訴するかどうか、嫌疑不十分(一般には証拠不十分)で不起訴にするか、事案軽微だったり示談成立などで起訴猶予という形で不起訴にするか、それらの判断は検察官が最終的に判断を任されており、これを起訴便宜主義と呼ぶ。
しかし、これにも例外があって、検察官が不起訴にした場合、そのことを不服として検察審査会というところに申立をすると(これを付審判請求という)、検察審査会が審査して、「不起訴相当」「起訴相当」の意見を出す。「起訴相当」の意見が出たときには、検察官は事件を再捜査する義務を負い、その結果、改めて起訴するかどうかを決める。この検察審査制度のミソは検察審査会の審査委員が一般市民だということである。裁判員制度より以前からある一般市民参加型の刑事司法の一部である。この様な形で、検察官が公訴権を独占しているのを一般市民の目からチェックする司法民主化の現れの一つということができる。
今回の件は、再捜査後、新たな証拠が出てきたということで最終的に起訴になった。
一般市民には馴染みの薄い制度であるが、この様な形で司法の民主化も図られていることを知ってもらいたくて、本件を採り上げた。