日教組は、08年2月「教育研究集会」の会場とするため、「グランドプリンスホテル新高輪」と190室の宿泊契約を結んだ。しかし、同ホテルは同年11月、「右翼の街宣などで周囲に迷惑がかかる」として解約を主張し使用を拒否。これに対して、日教組側が宿泊契約を守れという裁判所の仮処分命令を求めて東京地裁に提訴。東京地裁は、日教組側の主張を全面的に認めて仮処分命令を発したが、ホテル側が抗告(高等裁判所に仮処分の異議申立をすること)。しかし、東京高裁はこの抗告を認めず教研集会2日前に抗告棄却を決定。ところが、ホテル側は裁判所の判断を無視して使用拒否を継続。
この事件に対して、日教組がホテルに対して本格的な損害賠償請求を改めて提訴していたところ、この度、東京地裁は日教組を全面的に勝訴させた(朝日朝刊7月29日)。
ホテル側は一旦宿泊契約を結んだ以上、原則として宿泊させる法律的な義務がある。それをしないというから、日教組が契約通り即ち法律通りせよと仮処分を申し立てた訳である。ホテル側の主張が認められなければ先に書いた通り抗告という異議申し立ての手段が認められている。しかし、そこでもホテル側は負けたのだからホテル側の宿泊させる法的義務は益々明らかになった訳である。ところが、ホテル側は高裁のこの判断を無視して実力行使で日教組の宿泊を認めなかった。最高裁を頂点とする裁判所の法的専門的判断は順守されなければならないという合意のもとで日本国家は成り立っている。国でさえ敗訴判決に従うのである。一私企業のホテルが高裁の判断を実力で無視するなどあってはならないことで、今回、地裁の厳しい判断が出たのは当然と言えよう。