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福岡市弁護士甲能ホーム判例解説インデックス最高裁 欠陥住宅の設計・施工者等に厳しい責任を判断

判例解説インデックス

2007.07.07(土)

最高裁 欠陥住宅の設計・施工者等に厳しい責任を判断

居住者保護の不法行為基準

7月6日、最高裁第2小法廷は、建物の設計者,施工者又は工事監理者が建築された建物の瑕疵(欠陥という意味の法律用語)により生命,身体又は財産を侵害された者に対し不法行為責任を負う場合について、設計者・施工者・工事監理者の責任を厳しく判断する方向を示し、責任を狭く解した福岡高裁判決を破棄し差し戻した。

 福岡高裁が「建築された建物に瑕疵があるからといって,その請負人や設計・工事監理をした者について当然に不法行為の成立が問題になるわけではなく,その違法性が強度である場合,例えば,請負人が注文者等の権利を積極的に侵害する意図で瑕疵ある目的物を製作した場合や,瑕疵の内容が反社会性あるいは反倫理性を帯びる場合,瑕疵の程度・内容が重大で,目的物の存在自体が社会的に危険な状態である場合等に限って,不法行為責任が成立する余地がある」として、設計者らの不法行為責任を狭く解したのに対して、

「建物は,そこに居住する者,そこで働く者,そこを訪問する者等の様々な者によって利用されるとともに,当該建物の周辺には他の建物や道路等が存在しているから,建物は,これらの建物利用者や隣人,通行人等(以下,併せて「居住者等」という。)の生命,身体又は財産を危険にさらすことがないような安全性を備えていなければならず,このような安全性は,建物としての基本的な安全性というべきである。そうすると,建物の建築に携わる設計者,施工者及び工事監理者(以下,併せて「設計・施工者等」という。)は,建物の建築に当たり,契約関係にない居住者等に対する関係でも,当該建物に建物としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき注意義務を負うと解するのが相当である。そして,設計・施工者等がこの義務を怠ったために建築された建物に建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵があり,それにより居住者等の生命,身体又は財産が侵害された場合には,設計・施工者等は,不法行為の成立を主張する者が上記瑕疵の存在を知りながらこれを前提として当該建物を買い受けていたなど特段の事情がない限り,これによって生じた損害について不法行為による賠償責任を負うというべきである。」として不法行為責任の範囲を広げた。例えば、バルコニーの手すりの瑕疵であっても、これにより居住者等が通常の使用をしている際に転落するという、生命身体を危険にさらすようなものもあり得るので、基礎や構造躯体に瑕疵がある場合に限って不法行為責任が認められるとすべきではない、とする。

しかも、その責任を問う主体は設計・施工者と直接契約をした者に限られないとした。

いわゆる欠陥住宅について、設計・施工者の責任を重くしたもので、居住者側に有利な判断といえる。