東京地裁は、平成19年3月16日、証券取引法違反の罪に問われた元ライブドア社長堀江貴文被告に、懲役2年6月の実刑判決を下した(朝日新聞16日夕刊)。続報によると、追加の保釈金2億円を納めて再保釈されたとのことである。最初の保釈と合わせると5億円になるそうである。
この様な事件で実刑判決が下るのは珍しいと思うが、今回は実刑か執行猶予かではなく「保釈」の仕組みについて、若干解説する。
「保釈」は、保証金を納付することを条件として勾留中の被告人を釈放することである。一般に誤解されている向きもあるようだが、保釈は起訴された後でないと出来ない。被疑者(容疑者)として勾留されている捜査段階では保釈は認められていない。
これも誤解があるが、刑事訴訟法では被告人が保釈を請求したときは、本来、保釈されるのが原則とされている。これを「権利保釈」という。但し、一定以上の法定刑が定められた重い罪の事件であるときや証拠隠滅の惧れがあると思われるときなど、法で定めた例外があるときは保釈請求は認められない。ところが、実際の運用はこの例外が広く解され保釈が中々認められないとされている。だから、保釈請求は認められないのが原則という誤解は止むを得ない面がある。
また自白せず否認を続け無罪を主張している事件だとかは第一回公判の罪状認否で起訴事実を認める、すなわち有罪を自認するまで保釈を認めない運用がされていると言われ、俗に司法の世界では「人質司法」とまで呼ばれている。つまり身柄を人質にとって拘束し続け保釈を認めないことにより自白を迫る形になっているからである。映画評で書いた「それでもボクはやっていない」でも言及されている。
また俗に「保釈金」と呼ばれるが、法的には「保釈保証金」が正しい。その金額は、公判に出頭しなかったり逃亡したりすれば保釈保証金が没収されるという心理的圧迫を感じる程度のものでなければならないので、被告人の経済力にもよる。本件の堀江被告の事件では結局合計5億円になったということである。
保釈決定は禁固以上の実刑判決が出ると失効し、再度勾留される。しかし再度、保釈請求が出来るので、本件では再保釈請求が認められた訳である。
私も時々保釈の手続をとるが保釈保証金の決定額が100万円単位で、時々担当する国選弁護事件では金が無いから国選でやっていて保釈保証金までは用意できないことが多いので、被告人が可愛そうに思うことが屡である。