最高裁は、平成19年4月24日、自動継続定期預金の払い戻しにつき、その消滅時効起算点を、預金者による解約申入れがなされたことなどにより、それ以降自動継続の取扱いがされることのなくなった満期日が到来したとき、と判断した(朝日新聞夕刊)。
定期預金の自動継続とは、定期預金の満期日までに継続停止の申出をしない限り、前回と同一期間の預金契約として自動継続されるという特約に基づくものである。
時の経過により権利が消滅してしまうものを消滅時効というが(逆に権利を取得するものを取得時効という)、一般民事の債権は10年、商事債権は5年の時効期間である。そして、この時効期間はいつから起算するかがはっきりしていない限り時効完成時期もはっきりしないことになる訳である。この点、民法は「消滅時効は権利を行使することができる時から進行する」と条文で定めてある。
では、この「行使することができる時」とは具体的に何時のことを言うのか。債権(一般の貸金債権をイメージして頂けば良い)の場合、法律上は「弁済期」がそれである。例えば半年後に返すという約束で100万円貸した場合は半年が経過した時点であり、貸した時点そのものではない。では「返すのはいつでもいいよ」といって貸した場合はどうかというと、これは「期限の定めなき貸借」ということになって、この場合は貸し主が返済を催告して相当期間が経過した時点が弁済期ということになっている(この「相当期間」とは金額等により社会常識で決まる)。この「期限の定めがない」場合は、貸した時点ではなく相当期間が経過した時点が起算点とされる。
では、冒頭挙げた自動継続定期預金の場合はどうかというと、最初の満期日という高裁判断があったのに対して、最高裁が異なった判断をした訳である。
預金者側に有利な判断である。
ちなみに、この事案の当時(昭和62年)の定期預金金利は年3.86%で、現状の低金利から比べると隔世の間がある。