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福岡市弁護士甲能ホーム判例解説インデックス法務検察当局、執行猶予取消が確定した受刑者に別件無罪確定により恩赦

判例解説インデックス

2007.05.30(水)

法務検察当局、執行猶予取消が確定した受刑者に別件無罪確定により恩赦

行政上の救済

刑の執行猶予を取り消されて収監された40代の男性が別の裁判で無罪となったため、法務検察当局が恩赦の制度を使って釈放していたことがわかった(朝日29日朝刊)。

執行猶予とは、3年以下の懲役刑・禁固刑などの刑を言い渡すべきときに、その刑の執行を最長5年間猶予し、刑務所に入れないまま社会内で生活させる形の有罪判決である。この執行猶予期間が無事満了すれば、刑の言い渡しは効力を失うことになっている。しかし、この猶予期間内に別の犯罪を犯し、その犯罪で禁固以上の刑に処せられたときは必ず執行猶予は取り消され、罰金以上の刑に処せられたときは執行猶予が取り消されることがある。執行猶予が取り消されると、最初に受けた3年以内の刑と、執行猶予取消の原因となった新たな犯罪の刑とが併せて執行されるため、受刑者には酷なことになるが、この様な不利益で心理的な縛りをかけて執行猶予期間内の新たな犯罪を抑止するという仕組みである。

男性は執行猶予中に脅迫罪で起訴された。そこで、検察側が執行猶予の取り消しを申し立て、東京地裁が執行猶予を取り消し、それが最高裁まで行って結局取消が確定した。ところが、後に起訴された脅迫罪が「被害者の証言は信用できない」と無罪が言い渡され、検察も控訴せず無罪判決が確定した。

そこで、残った執行猶予取消決定そのものは違法な手続を経てはいないものの妥当とは言えなくなった。しかし、最高裁まで行って確定したものだから改めて取り消すことが出来ず、結局、恩赦の制度を利用して釈放することになったということだろう。

恩赦とは、平たくいうと刑の執行権者である行政権が、刑の執行を取り止めて受刑者を赦すことである。国家的慶事(例えば皇太子のご成婚など)などの際に行われることが多い。

本来の恩赦のあり方とは若干ずれるが、受刑者の非常救済措置とみることができようか。