大阪高裁は、5月14日、平成16年2月に起きた大阪地裁所長襲撃の強盗致傷事件で、犯人の一人とされた当時14歳の少年に対し、大阪家裁の少年審判事件で中等少年院送致の決定を取消し、家裁へ審理を差し戻した(15日朝日新聞朝刊)。
新聞報道によると、「自白は取調官の誘導がうかがわれ、信用性に疑いがある」とのことである。この事件では、当時13歳から29歳の5人が逮捕・補導され、成人男性2人は大阪地裁で昨年3月に無罪判決を受けているという。
少年事件では、特に少年の未熟さから、少年の取調官への迎合や威迫への屈服などの傾向が見られるとされ、自白のみを根拠とする非行事実の認定の危険が指摘される。このところ、鹿児島の選挙違反事件を始め、自白の信用性を問う判決が相次いで出ている感があるので、本件も採り上げた。
同じ記事の隣に、東京地検が取り調べ状況を録画したDVDを証拠申請するとの記事も出ている。「取調べ状況の可視化」とは最近富に言われるようになって来ているもので、自白が被疑者の任意になされたものかどうかを調べる際に、取調べ状況の録画を法廷で再現できるようにしようというものである。違法捜査の抑制という目的もあるが、特にいわゆる法律の素人が裁きの一翼を担う裁判員制度を睨んでいることは間違いない。膨大な自白調書を読み比べて、その調書間の自白の変遷や記憶の不自然な詳細さ等を見抜くという役割を素人に期待するのは、素人は慣れてもいないし短期間に結論を出すことが期待されている以上、時間的にも無理があるからである。ただ、映像のインパクトは圧倒的なので、両刃の剣という感も否めない。密室で取得される自白よりはましだろうが。