1月18日、鹿児島地裁は、鹿児島県警の捜査が任意捜査の範囲を逸脱した違法があるとして、捜査の対象となった原告の慰謝料請求を認めた(朝日新聞夕刊・朝刊)。
新聞報道によると、原告は公職選挙法違反の容疑で取調べを受けたが、その際に「早く正直なおじいちゃんになって」(孫)、「こんな人間に育てた覚えはない」(実父)、「娘をこんな男の嫁にやったつもりはない」(義父)等の内容の家族のメッセージに見立てた文言を3枚の紙に書き、原告の足首を掴んで踏ませた、ということである。
あきれるしかない。殴る蹴るの明らかな暴力ではないにしろ、これは法的に見ても「暴行」と評価しても差し支えない。
「暴行」というとき、一般の人は「殴る・蹴る」をまず思い浮かべると思うが、法的には「不法な有形力の行使」と定義され一般の人たちが浮かべるイメージよりは広く解されている。つまり「不法」であること、「有形力」であること、が「暴行」の内容である。「不法」は、まぁ「合法の限界を超えた」ということでイメージしやすいと思うが、「有形力」という言葉自体はわかりにくいかもしれない。反対語「無形力」イコール言葉と考えれば大体イメージできるのではないか。実際の裁判例で「暴行」とされたのは、人の頭を本人の意思に反して丸刈りにしたことである。物理的に見れば髪の毛の切断でしかなく本人の生理機能に障害を発生させる訳ではないのだが、これも「暴行」と評価された。
だから、今回の「足首を掴んで書面を踏ませる」行為は法的には「暴行罪」の「暴行」である。つまり鹿児島県警は、犯罪に当たる行為で原告を脅しつけたということになる。しかも、親や孫の言葉が書かれてあると想定された書面であれば、その精神的苦痛は多大なものがある。
だから総合すると、これは「拷問」という言葉で評価せざるを得ない。21世紀の文明国である筈の日本で、拷問が行なわれたのである。
繰り返すが、あきれるしかない。鹿児島県警には猛省を促す必要があると思う。