最高裁は、30日、政党のビラを配布するためにマンションに立ち入ったことで住居侵入罪に問われた事件で、被告人の上告を棄却し被告人の有罪を確定させた(朝日12月1日朝刊)。
マンション側に「チラシ・パンフレット等広告の投函は固く禁じます」という張り紙があるにも関わらず、被告人がマンション7階から3階までの各部屋へチラシを投函したことを法益侵害は重い、とし、表現の自由の制限になるという被告人側の主張は「表現そのもの」ではなく「表現の手段」を処罰したもので憲法には反しないとした。
この判旨には賛成し難い。
「表現そのもの」と「表現の手段」というのは切り離せないもので、この様に別扱いして憲法に反しないというのは詭弁臭い。ビラ配りで自ら表現しようとする者にとって、人に受け取って貰う方法の一つに各戸配布は重要な位置を占める。特にそれが商業広告ではなく、政党の政策ビラであれば、民主主義における表現にも関わる重大問題だ。それを国家権力が刑罰を以って威嚇するというのは、憲法の精神に反するものだと考える。表現への「萎縮効果」が心配されるが、言論表現の自由は萎縮するような環境では十分に達成されない。今後似たような問題では最高裁は同旨の判断をしないように望む。