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福岡市弁護士甲能ホーム判例解説インデックス判例解説「大阪高裁、神戸市議会の賠償帳消し議決を無効と判断」

判例解説インデックス

2009.11.30(月)

判例解説「大阪高裁、神戸市議会の賠償帳消し議決を無効と判断」

55億円の賠償を市長と市の外郭団体に命令

神戸市が外郭団体に支出した補助金は違法として、当時の市長らに返還を命じた事件についての控訴審判決で、大阪高裁は、市議会が一審判決後返還請求権をすべて放棄するとした議決を無効とし、一審の認めた市への返還請求を更に増額する判決を下した(28日朝日)。

 自治体の首長らが公金の違法支出などで自治体に損害を与えた場合、住民は、監査請求を経た上で被害回復を求めて首長らに直接賠償や返還を求める裁判を起こすことができる。

本件では、一審の神戸地裁判決は住民側の請求を認めて当時の首長らに支出額約45億円を返還するよう命じた。ところがその後、市議会がこの一審判決を承けて、市長に対する賠償責任請求権を放棄する決議を行なっていた。大阪高裁は、この決議をむ「議決権の濫用」と断じて無効とした。

 このような住民が行なう訴訟は住民訴訟と呼ばれているが、住民の税金を主張が違法に支出した場合を、司法通じて是正する制度である。しかし、せっかく司法が違法判断をしても議会がその賠償請求権を放棄して司法判断を後から無にする例は、結構見られるらしい。その議決を有効と認めた高裁判例もあるそうだが、私の感覚では、個人のレベルでの放棄なら自由意志にまかされても、自治体の公金のレベルでこの様な放棄決議は司法権を無にし住民の保護に欠けるもので認められないと考える。

 神戸市は上告したそうで、同種事件も最高裁に係っているそうだから、最高裁の判断が待たれる。