ロシア連邦大統領プーチンの解説である。生い立ちや権力の座に登り詰める過程も描かれているが、評伝とまでは言いにくい。叙述に繁簡があるからである。
プーチンがソ連時代のKGB出身であることは広く知られているが、ソ連崩壊後、KGBを辞めてどのような過程で大統領になったか、更には一旦首相に降りて、その後、どうやって大統領に返り咲いたかが語られる。
興味深いと言えば確かに興味深い。特に少年時代は不良だったが、日本の柔道に出会って人生が変わった、日本人で一番親しいのは柔道家の山下泰裕氏であり、大統領公邸には道場があるなど、中々である。
ただ、企業国有化が進み、旧ソ連時代とどう違うのかが些かわかりにくい。資本主義国家ではあるが、国営企業が主要産業を押さえているということなのだろうか。
本書の標題にあるように、プーチンは独裁化している様子である。ソ連崩壊後の民主化・資本主義化がスムーズに進まなかった過程で台頭してきた権力者である。ただ、反プーチン勢力の存在も今回の大統領選で活躍した。結果はプーチンの勝利であったが、多くの独裁国家にありがちなように、90%以上の圧勝とは行かなかったし、選挙に不明朗な疑いもあったようであり、その権力基盤は盤石とは行かないようである。
ロシアの現状を知るというより、標題通りプーチン大統領を知るには、わかりやすい本である。