宗教にお詳しいお二人の社会学者によるキリスト教についての対談である。「日本人の神様とGODは何が違うか?」という副題が示すように、日本人が十分理解していないキリスト教についての入門書となっている。実際、近代化ないしグローバリゼーションの内容となっている西洋化の骨格にキリスト教があるのは間違いなく、それを対談の中で説き明かそうとするものである。
一神教と多神教の違い、神とGODの意味、ユダヤ教、イスラム教、旧約聖書、新約聖書、イエス・キリストその人、キリスト教と資本主義との関連など、興味深い話題が平易な会話体で交わされるのだが、内容は深い。
私の専門との関連で言えば、例えば
「大澤 人権も、神が自然法を通じて、人々に与えた権利という意味がある。神が与えた権利を、国家が奪うことはできないから、そのことをはっきり、憲法に人権条項をつくって書き込んでおくのです。自然法はいつ制定されたかと言えば、天地がつくられたのと同時のはず。そこでネイチャー(神がつくったそのまま)の法と呼ばれる。キリスト教徒がなぜわざわざ、自然法というものを考えなければならないかと言うと、宗教法を持っていないから。世俗法にまかせておいたのでは、キリスト教徒の権利が守れないかもしれないから、です。」
など、私が学んだ近代法とキリスト教の関連も語られる。
その他、ユダヤ教は厳しい律法があり、イスラム教もコーラン(本書では「クルアーン」)で細かく厳しい戒律が定められているのに、キリスト教にはそれらがないから、世俗法で幾らでも決められ自由に定められるので、それが近代合理化・資本主義化の推進力となった等の興味深い指摘がある。
私は実家に仏壇があって父や祖父のお位牌が祀ってあって、一応仏教徒だが、特に信心深いわけではないので、一神教の神を信じる宗教的心情には疎いのだが、本書でキリスト教の一端に触れた思いがする。
本書は、西洋・近代を知る上では好個の手がかりとなるであろう。