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2011.01.30(日)

九州少年

甲斐よしひろ

ロックシンガー甲斐よしひろ氏の自伝的エッセイである。甲斐よしひろというより甲斐バンドと言った方が分かりやすい人が多いかも知れない。

甲斐氏は1953年博多の生まれで、育ちも殆ど博多、生粋の博多っ子である。私は、1954年生まれなので、甲斐氏の語る世相や芸能界の話など殆どわかる、というより共感する。だから、甲斐よしひろとはこんな男だったのかとおどろく部分より、そうだよねぇ、そうだったよねぇと共感ばかりして読み終えた。

ただ、私の田舎は博多の近くではあったが(通科高校生の多くが博多の大学に行く)、博多そのものでは勿論ないので、博多のロックシーンなんかはわからない。ここら辺は1年の年の差は結構大きい。私は、博多ロック・フォークの伝説の殿堂「照和」を知らないのだ。

ロックミュージシャン甲斐よしひろの誕生秘話が幼時から始まって少年時代を経て高校を卒業し一旦はサラリーマンになるのだが、ついにロックミュージシャンになるべく上京するまでが語られる。こういうと怒られるかも知れないが、甲斐氏の少年時代は結構まともである。酒やドラッグや喧嘩を繰り返して少年院を経験してロックミュージックに目覚めるというパンクムードとは無縁である。家庭環境は複雑だが、その辺の触れ方はあっさりしており深刻ではない。この経歴があって、この甲斐よしひろがいるのだとよくわかる。

学生時代、甲斐氏のDJを好んで聴いていたことがあったが、その記憶が蘇って来た。

私にとっては、新刊だが懐かしい本に出会えたという感触である。


ポプラ文庫
540円+税