2011年版「このミステリーがすごい」1位ということで、読んでみた。
確かにミステリーではあり、ストーリーは錯綜して犯人探しは入り組んでいるのだが、謎解き自体はどちらかと言えば、それほど鮮やかとは言えない気がする。寧ろ、書き込まれた登場人物たちの個性とその絡みを楽しむ、すなわち一般小説を楽しむという方向で読むのが良い。
17歳の兄と15歳の弟が、ふたりで森に行き、兄は帰ってくるが弟は行方不明になる。その後20年ぶりに兄が帰郷し、そこで弟のものと思われる骨が次々と自宅に届けられる。誰が弟を殺したのか、が主題ではあるのだが、この兄は軍隊で犯罪捜査官として過ごし、彼を待ち受けるのは元判事で弟失踪時の自宅を病的なまでに保存する父、兄弟を育てた万能人間とも思える小柄な家政婦、絶世の美女だがある時期からアル中になった女、そこに心の傷を持つ娘の鳥類学者、そして、アル中の女の夫で派手なやり手の弁護士、その他、多彩な登場人物が丁寧に描き込まれていて、十分、小説としては面白い。
犯人探し自体もそれなりに面白いが、多様な登場人物が織り成す人間模様を小説として楽しむという行き方かお勧めかもしれない。