ここのところ軽い読み物ばかり読んでいたので、少しは硬い本を読んでみようと思い読み始めた。
大学の教養課程で「政治学」の教科書に指定された著者の「現代政治の思想と行動」は未だ持っているが読んではいない。講義もサボっていたので、著者の本は殆ど読んでいない。唯一、高校の現代国語の教科書に載っていた「である論理とする論理」を覚えているだけである。
しかし、著者が戦後日本の思想界をリードした卓越した思想家であることだけは、知識としては知っていた。いつか取り組んでみたいとは思っていたのだが、幸い入門書的な本書を見つけたので覚悟の上で取り組んだ。
決して優しくはない。編者の杉田教授も解説で書いておられるが、逆説が多く(杉田教授も時にアクロバティックな逆説と評されている)論理についていくのに些か骨が折れる。中身も、本居宣長や吉田松陰などの江戸時代からの日本の思想家から原文が引用され、漢文読み下しの原文は朧げな高校時代の漢文の知識を総動員して大意を掴む必要があり、楽ではない(ただ戦後の思想についてはそうでもないが)。
第2次大戦を推し進めた「超国家主義の論理」が「全国家秩序が絶対的価値たる天皇を中心として、連鎖的に構成され、上から下への支配の根拠が天皇からの距離に比例」し、この権力構造の中で、誰もが上から抑圧されていると感じ、それを下へと移譲していく「抑圧移譲」が横行し、誰もが責任を負わない体制がそこに生まれる、とされる。東京裁判での被告となった国家の主要人物たちの言説を解読していく中で、「無責任の体系」が明かされる。
その他、示唆に富む思想が集めてあるが、とてもここでは紹介しきれないし、私自身未消化であるから解説の能力はない。
しかし、さすがに戦後日本の思想界をリードしたとされる著者だけあって、示唆に富む指摘が満載である。