手塚治虫先生を担当した編集者15名に対するインタビューを集めたものである。手塚先生と担当編集者のやりとりを通じて、手塚先生の知られざる素顔が伝わって来るし、締め切り間際の修羅場もよくわかる。
のっけのインタビューは「神様を殴った男」と題して、原稿取りに熱心さのあまり手塚先生を殴ってしまった編集者のインタービューだが、実際はその場の勢いハプニングのようなものだったらしい。しかし、我々が手にする完成稿の載った雑誌には当然その様な経過はわかる訳がないので、毎月・毎週の締め切り間際には手塚先生の周りでは、この様な修羅場が繰り広げられていたのであれば、想像するだけで笑えてくる。
この間に、虫プロ商事倒産などのエピソードも語られてはいるのだが、それほど詳しくはないので、詳細はわかならない。それでも、手塚先生が結構、感情むき出しで編集者に接している話は出てくるので、手塚先生が、ストーリーマンガの神様として神格化されていても、実際は相当人間臭い人だったことがわかる。編集者には敬語を使い、紳士的に振舞っていたらしいが、気に食わない編集者の担当換えを本社に直訴したりされている。
また、編集者との遣り取りの中で、先生が大御所でありながら、読者の人気を大変気にして又新人マンガ家に異様なライバル意識を持っていたことや、家族サービスを欠かさぬようにしていたことなど、生身の人間としての姿が良く伝わってくる。
しかし、やはりマンガに関しては天才的だったこともわかるし、死の間際に朦朧とする意識の中で鉛筆を欲しがるなど、やはりマンガの神様と呼ばれるに相応しい人であったのだと思う。