最高裁は、平成18年6月16日、B型肝炎ウイルス感染の被害は国に責任があるとした(朝日6月17日朝刊)。
「裁判所」のホームページに判決要旨と判決全文が掲載されている。
要旨は、「1 B型肝炎ウイルスに感染した患者が乳幼児期に受けた集団予防接種等とウイルス感染との間の因果関係を肯定するのが相当とされた事例 2 乳幼児期に受けた集団予防接種等によってB型肝炎ウイルスに感染しB型肝炎を発症したことによる損害につきB型肝炎を発症した時が民法724条後段所定の除斥期間の起算点となるとされた事例」とされている。
判決全文を読むと、新判例という訳ではなくて従前の判例の適用として今回の結論が導かれている。
まず、因果関係であるが、「訴訟上の因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らし全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果を招来した関係を、是認しうる高度の蓋然性を証明することであり、その判定は、通常人が疑いをさしはさまない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、かつそれで足りる。」という判例を引いている。難しい言い回しだが、要するに、裁判で因果関係有りと証明されたというためには、普通の人たちが確信を持てれば良い、という理解で足りる。
次に、除斥期間であるが、除斥期間そのものについては本HPの2006年6月8日のドミニカ移民判決の解説を読んで頂くとして、その起算点については、筑豊じん肺訴訟判決の「身体に蓄積する物質が原因で人の健康が害される場合や、一定の潜伏期間が経過した後に症状が現れる疾病など、加害行為が終了してから相当期間が経過した後に損害が発生する場合には、当該損害の全部又は一部が発生した時が除斥期間の起算点となると解すべきである」という判例を引いている。民法724条には「不法行為のとき」から起算することになっているのだが、この「不法行為のとき」とは、イコール加害行為ではなく、加害行為と損害発生までの一連の流れとして把握したということである。
実は、私がこの判決に注目するのは、上記2点もさることながら、B型肝炎ウイルスが発見される昭和48年よりも前の「昭和26年当時、集団予防接種の際、注射針や注射筒を連続して使用するならば、被接種者間に『血清肝炎ウイルス』に感染するおそれがあることを当然に予想できた」として、過失=落ち度を認めたことである。この様に『血清肝炎ウイルス』という括り方で行くと、私も参加している薬害C型肝炎訴訟でも、国の落ち度が認められる可能性が出てくるからである。6月21日は、大阪地裁の薬害C型肝炎期日である。期待したい。