著者と面識はないが、同業の大先輩ということになる。著者略歴によると、ロンドンの法律事務所にも勤務されたご経験をお持ちで、ビジネス法務、国際取引法務を専門とされるとのことである。私とは全くタイプが違うが、内容は私にとっても大変参考になる。
しかし、本書は別に同業者向けに書かれている訳ではなくて一般読者向けに書かれており、そして、一般読者にも大変に有益な本だと思う。
ビジネスにおいても私生活においても要するに人生において、人は様々な難局に直面する。そして、その難局を何とか打開して行かなければならない。その際にどう考えたら良いのかについて、著者が七つのアドバイスをする。曰く
(1)具体的に考える
(2)オプションを発想する
(3)直視する
(4)共感する
(5)マサカを取り込む
(6)主体的に考える
(7)遠くを見る
であるが、その具体的内容は本書を読んで頂くしかない。大変に説得的である。
例えば、オプションを発想するの項で語られる著者が実際に経験された事例。ある企業が、長年継続的な契約関係を結んできた企業との契約を解除したいと考え、顧問弁護士に相談したところ、多額の損害賠償請求を受けるだろうとのアドバイスを受けた。そこで著者にセカンド・オピニオンを聞きに来たのだが、著者の考えでは法律解釈ではそうだろうが、紛争処理としては別のやり方があるとして、結局、2年後に解約することで合意し、損害賠償も支払う必要がなかったとのことである。
書名は何となくハウツー本的だが、実際の内容は大変深い思索と経験に裏打ちされているもので、新書ではあるものの読み応えがある。