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2007.05.26(土)

超・格差社会 アメリカの真実

小林由美

本書は2006年9月25日発行だから、いわゆる新刊として紹介するには若干時間が経っているが、内容は今後少なくとも何十年かは古くならないだろう。

書名が見事に内容を要約しているが、アメリカ国民の所得格差は日本の比ではなく驚くべきものである。もはや完全な階級社会といってもよいだろう。

著者は階級とは言わず階層とおっしゃっているが、それは階層間の移動が可能だとお考えだからである。私自身は、移動は稀にはあるだろうが滅多にない以上階層が固定され、階級を形成しているのではないかと思う。

著者の階層区分は4つ。すなわち「特権階級」「プロフェショナル階級」「貧困層」「落ちこぼれ」である。

「特権階級」は、純資産10億ドル(1200億円)以上の400世帯前後と純資産1億ドル(120億円)以上の5000世帯で構成されるそうである。

「プロフェショナル階級」は、純資産1000万ドル(12億円)以上の富裕層と、純資産200万ドル(2億4000万円)以上で且つ年間所得20万ドル以上のアッパーミドル層からなる。彼らは高給を稼ぎ出すための、高度な専門的スキルやノウハウ、メンタリティを持っている。

この二つの階層は、アメリカ総世帯の5%未満に過ぎないそうだが、にも関わらず全米の富の60%が集中しているとのことである。

アメリカの豊かさの象徴だった中産階級は、一部プロフェショナル階級に上昇したものの、いまや殆どは「貧困層」に転落し、更には最下層に貧困ライン(4人家族で年間所得2万3100ドル=約280万円)を下回る「落ちこぼれ」がいる。完全な二極分化である。

よくこれで南米みたいに左翼政権が出来たりしないものだと思うが、実は、そこにアメリカ社会の様々な歴史・文化・仕組がある。本書は、階層分化・冨の集中過程という歴史経済的分析もとても面白いが、やはり実際に長年住んでいる人でないとわからない文化が大変興味深く提示してある。

アメリカの一人勝ちは当面続きそうである。暗然とする。


小林由美<br />日経BP社
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