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2007.03.30(金)

ロング・グッドバイ

レイモンド・チャンドラー 村上春樹 訳

村上春樹氏による「新訳」が「売り」だし、名著の誉れ高い本なので購入した。

学生の頃、清水俊二氏訳の文庫本で「長いお別れ」を読んだ筈なのだが、ストーリーは完全に忘れていた。ただ、医師のお稚児さん的な精神異常の美男が登場する場面は、あぁこの場面は読んだなぁとなぜか鮮やかに思い出した。しかし、村上氏の解説によると、清水氏の訳は全訳ではないのだそうで(初めて知った)、ひょっとしたら私の勘違いかも知れない。

村上氏の訳業の評価は私にはわからないし、況して清水氏の訳と比べてどうかとなると、清水氏の本が手元にないので益々わからない。以前、サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」の訳業については野崎孝氏訳の印象が強すぎて、村上氏訳(書名は原題通りの「キャッチャー・イン・ザ・ライ」)が少々物足りなく感じたと書いたことがあるが、今回は全くお手上げである。

また、本の内容ついては、村上氏ご自身による丁寧な解説があり、かつフィッツジェラルドの「グレート・ギャツビー」との鮮やかな対比論は、なるほどプロの作家はこんな深い読み方をするのかという意味で、とても私などは足元にも及ばない。私ごときが何かを付け加える能力は全くない。

そうなると、訳業についても何も言えない、本の内容についても何も言えない、解説についても益々何も言えないということになって、殆ど、ここで書く内容は何もなくなってしまう。

まぁ私も読んだよ、という報告で今回は勘弁して頂こう。


レイモンド・チャンドラー 村上春樹 訳<br />早川書房
早川書房
1905円+税