オバサンみたいでとても恥ずかしいのだが、実は私は生まれて初めてNHKの朝の連続テレビ小説を、1年間ほぼ毎日見続けた(3月31日終了)。
作家田辺聖子氏の自伝的小説やエッセイに材をとったもので「原作」ではなく「原案」となっている。
田辺聖子氏は昭和3年、大阪市のお生まれで、長じて「カモカのおっちゃん」と呼ばれる方と結婚された。その「カモカのおっちゃん」が亡くなるまでの結婚生活と、そこに至るまでの戦争中の子供時代の様子なども描かれる。戦時中も戦後も昭和40年代までの様々な庶民のエピソードが積み重ねられ、昨年ヒットした「三丁目の夕日」辺りと重なるのかも知れない(といいつつ私は原作のコミックは読んでいるが映画は観ていない)。
原案の良さに更に脚本も良く出来ており、コテコテの大阪喜劇とは一味違っている。
そして、やはりテレビは配役である。
主人公田辺聖子氏の役は、あの天才喜劇役者藤山寛美さんの愛娘、藤山直美さんである。藤山寛美さんは東の天才「フーテンの寅」こと渥美清さんが一目も二目も置いていたそうだが、最早そんな枕詞は全く不要の立派な役者さんである。人情味溢れるコミカルな役を見事に演じておられた。
そして、正直なところ私はこのドラマで拝見するまで存じ上げなかったのだが、夫役「カモカのおっちゃん」の國村準さんも又いい。私は藤山直美さんの属する劇団などで相手役を務めるベテラン俳優さんなのかなと思っていたら、映画などで大変な活躍をされ注目を集めておられる実力派なのだそうである。とぼけて飄々としていて、しかも医師として夫として父として決めるべきところをピシッと決める。男から見ても中々カッコいいのである。
それから、私が昔から大ファンの、いしだあゆみさんについて一言しない訳には行かない。薄幸の女性を演らせたらピカ一という評価があるが、このドラマでもハイミスの秘書役をコミカルに演じる一方で、父を九州に残して仕事をする寂しさ等を見事に表現し、特に主人公の思いやりに触れて抑えに抑えつつも感涙に咽ぶシーンがあり、ウーンさすがだなぁと唸ってしまった。実は私は、いしだあゆみさんに対しては殆どミーハー的なファンで、20年近く前、湯島の司法研修所に通っていた頃、いしださん行きつけのお店が近くにあると聞き込んで絶対卒業するまでに行って実物のご尊顔を拝するぞと決めていたのだが、結局果たさなかった。残念である。ただ、テレビは残酷である。申し訳ないが、いしださんが年齢相応のお顔になっていたのがアップで良くわかった。多分30年くらい前の映画になると思うが、緒方拳さんが不良刑事の役だった「野獣刑事」というのがあって、そこで不良刑事の情婦役を演られたのだが、その薄幸で、どこか徒っぽい退廃の雰囲気が、私には綺麗だなぁと感じられて参ってしまったのだったが。
その他に、火野正平さんや桜木健一さん、イーデス・ハンソンさん等、個性的な脇役もそれぞれ存在感があって十分楽しめた。
今年は何気なく見始めて、結局、一年通して見てしまったが、多分こんなことはもうあるまい。良く出来たドラマだったからだし、偶々最初の頃に連続して見る機会があったからである。私は、テレビは基本的にニュースとスポーツしか観ないし、今回の経験から新たな連続ドラマを観ようとまでは考えないのだ。