平成17年8月9日、福岡地裁はコンビニエンスストアのフランチャイズ本部に加盟店経営者に対する損害賠償(賠償額約950万円)を命じた(朝日新聞朝刊)。
フランチャイズ契約を巡る訴訟は、全国で頻発しているようである。
フランチャイズ契約とは、「事業者(「フランチャイザー」と呼ぶ)が、他の事業者(「フランチャイジー」と呼ぶ)との間に契約を結び、自己の商標、サービス・マーク、トレード・ネーム、その他の営業の象徴となる標識、および経営のノウハウを用いて、同一のイメージのもとに商品の販売その他の事業を行う権利を与え、一方、フランチャイジーは、その見返りとして一定の対価を支払い、事業に必要な資金を投下してフランチャイザーの指導および援助のもとに事業を行う両者の継続的契約関係をいう」(社団法人日本フランチャイズチェーン協会による定義)。少々定義が長いが、大体コンビニのチェーン店を思い出して頂きながら、この定義を読むとお分かり頂けると思う。
このフランチャイズ契約の特徴は、事業主体が本店・支店関係のように一つの会社に組み込まれるのではなく、或いは一方が他方の代理店のようになるのでもなく、独立の事業主体どうしの関係が建前である、ということである。
また、フランチャイザー(以下単に「ザー」という)の側が商品供給やノウハウの伝授をフランチャイジー(以下単に「ジー」という)に対して行うので、全くの素人でも経営が可能だということが謳い文句の一つであり、しかも全く無名の店舗を開いてゼロから出発するのではなく一応名の知れたザーであれば最初から一定程度の売上が期待できるというメリットもある。この様な特徴の結果、いわゆる脱サラ組が退職金を元手に一国一城の主を目指したり或いは別の職種の店舗を構えていた店が転業をする等して加盟しジーとなる事例がかなりある。
一方ザーとしては、ジーを加盟させる段階で加盟料を取る事例も多く、また加盟するジーの側の負担で店舗を増やし自己の商標を広く知らしめグループの売上を上げ商品も独占的に販売して、且つジーからロイヤリティ(商標などの使用料)を得ることが出来る。
つまり、本来はザーとジーの共存共栄が契約の目的である。
ところが、実際はジーを獲得して加盟料を取ることだけを目的とする、あるいは過大なロイヤリティーを請求する、更にザーからの商品供給でジーを締め付ける、等の事例が発生して訴訟沙汰になる例が多いのである。私が昔、担当した学習塾の例は、必ずジーとして塾が成功する旨の詐欺的言辞を弄して加盟させ、加盟料を取ったうえ碌な指導もしないのにロイヤリティーだけは徴収し、しかもすぐ近くに同じグループのジーを開店させて生徒の取り合いをさせるという悪質なもので、損害賠償請求訴訟では完勝した(しかし、本社が倒産してしまい損害回復は出来なかった)。
共存共栄を目指すかの如き契約の言葉だけに幻惑されると大変な痛手を蒙ることがあるが、うまく売上を伸ばしているグループもあるようなので、健全なフランチャイズ契約が日本で根付くよう、今後も裁判例の積み重ねが必要であろう。