自宅の使用をめぐってトラブルが起きていた不動産業者の従業員の胸を突いて怪我をおわせたとして傷害罪に問われた女性が、最高裁で無罪とされた(朝日夕刊)。
判決によると、女性の自宅の所有権の一部を不動産業者が取得。その後、不動産業者が「立ち入り禁止」と書かれた看板を取り付けては女性側が外すことが繰り返されいた。女性は06年12月、再び看板をつけようとした不動産業者の従業員を突いて、頭にけがをさせたとして傷害罪で起訴されていた。
この判決の特徴は、女性の体に危害が及ぼうとしたのではないのに「正当防衛」を認めたこと。「正当防衛」は日常語化しているが、一般にイメージされるのは身体に危害が及ぼうとするとき反撃行為が犯罪の外形を備えていても無罪とされるもの。本件では、単に看板を立て替えようとした行為が発端だから、通常と異なる。ただ、「財産権」への侵害ということで、正当防衛の要件を満たすとしたようである。
一般に正当防衛の要件の一つに「相当性」がある。反撃行為が相当性を超えると犯罪となるのだが、相当性内に留まる場合は正当防衛となり得る。本件では、例えば看板を掲げる行為に対して、包丁で刺したというところまで行くと「相当性」を超えたということになるだろう。
いずれにしても珍しい事例である。