かなり長いが、年末年始の休みに読んだ。「このミステリーがすごい第1位」「週刊文春2010年ミステリーベストテン1位」「山田風太郎賞受賞」という帯に釣られて、休みの間に読む長編に選んだのである。
面白いのは面白い。しかし、陰惨なのだ。ホラー映画を見ている感触がする(ちなみに私は血しぶきほとばしるホラー映画は気持ち悪くてみない)。
どんでん返しや犯人探しが主眼のミステリーではないので、大筋を明らかにしても問題ないと思うので書くのだが、大量殺戮の物語である。高校の一クラス全員プラスアルファの殺人シーンが延々と続く。それでも途中で本を投げ出させないのは、著者の筆力だし活字という媒体の間接性だろう。
それと、やはり主人公の造形だろう。当初、熱血高校教師として登場した主人公が、徐々に殺人鬼としての正体を現していく。その過程が不気味なのである。高校教師達の姿を描いて、ある意味で漱石の「坊ちゃん」のパロディという見方も出来なくはないが、その読後感は天地の差・質的相違である。当初ユーモラスに始まるかに見えるが、徐々に不気味な話になり、最期は酸鼻を極める場面の連続である。ただ、この自己中心の権化の様な殺人鬼の主人公に、ある種の魅力があるのは認めなくてはならないだろう。そこが、著者の腕の冴えといったところか。
結末には一つの救いはあるが、新たな悲劇を予感させる終わり方をして、その辺はうまいなぁと思わせる。
活字だからそれ程毒々しくはないが、そういうのが苦手な読者にはお薦めできないが、逆にホラー映画なんかが好きで堪らないという方には一気に読めそうである。物語の面白さは認めるが、好き嫌いははっきり分かれる性質の物語だと思う。