私はモグリであった。本書は文庫に収録される位だから単行本出版時から評判を呼んだそうである。元々は著者がネットで同名のサイトを運営しておられて、人気が出たことが出版の契機らしい。そんなことも知らなかったからモグリだというのだ。
書名も洒落のめして付けてあるが、著者プロフィールがそれに輪をかけており、著者の真実の姿はわからない。昔、自称ユダヤ人が「イザヤ・ベンダサン」というペンネームで本を出し、その後、実は山本七平という日本人であったということがあった(このペンネームの由来について、些か品位を欠く憶測が囁かれている)。本書の著者が日本人の父とイタリア人の母というプロフィールのもと、このペンネームを用いているが、本名がどういうもので、どこかの大学で教えてるらしい雰囲気だが(自称「講師」)どこの大学かもわからない。そういう点も含めて面白がる人でないと、本書の内容は楽しめないだろう。
ただパロディー一色と理解するのは間違いで、内容は極めて真っ当、批判は鋭いと思う。表現が洒落のめしてあるだけなのだ。
例えば
「一般の人が路頭に迷いかけて政府や自治体から金銭扶助を受けることを『生活保護』というのですが、まったく同じ内容が銀行員に適用されると『公的資金の注入』と名を変えます。なぜ呼び名が異なるのかを解明するには、民俗学的な研究が必要かと思われます。」
その他、マスコミで社会学者が唱えるお題目がことごとく(と言って良いくらい)揶揄され、その筆致は痛快である。ただ、確かに怒る人(特に学者)もいるだろう。
本書は、「反」社会学講座なのだが、「反社会」学の講座も期待したいところだ。