私が手に取った版は6刷で2007年7月30日発行となっている。発売当初、多数の話題を呼び数々の賞を受賞した(アメリカで)らしいのだが、私は本の帯からそれを知って興味を覚え、つい先日、買ってみて読み終えたばかりだ。
著者は1972年生まれの生粋の中国人女性で、北京大学を出た後、渡米留学(尤も専門は免疫学)し、その後アメリカで生活しているらしい。原書は全て英語で書かれた短編集。
中国国内の話、中国を出てアメリカで暮らしている中国人の話、など、主題は多彩。しかし、珍しい経歴と中国文学には全く縁のない私には、大変、清新な内容・語り口だった。中国人の現代インテリはこんな考え方をしているのか等、今まで全く知らない世界を味わった気がする。尤も、そこは文学。人間の孤独や断絶を断面鮮やかに見せてくれる短編ばかりである。文化大革命の傷痕や党への批判なども時折見られるが、それは淡彩画の一刷毛の様なタッチで正面から取り上げられることはない。ただ、現代中国の習俗に正面から入りながら老いの現象を捉えたり、或いは宦官に代表される中国文化の盛衰をシンボリックに表現して見せたり、その幅広さは驚かされる。
私は現代中国には人並みに興味はあるつもりだったが、新聞・特にテレビで表層的な報道を見るだけで、こういう現代中国知識社会がどうなっているかというところも今後注意を払わなければと認識を改めた次第。