若干古いニュースだが、知財高裁は、11月29日、特許庁が「ひよ子」饅頭の形状を「立体商標」として登録を認めた審決を取り消す判決を下した(朝日新聞11月30日朝刊)。
「ひよ子」饅頭の名前と形は、我々九州北部の人間には馴染み深い気がするが、同紙によると、知財高裁は「鳥の形と極めて似た菓子が全国に多数あり、和菓子としてありふれたもの」と判断したそうである。地元の人間としては些か残念だが、ここでは判断内容より「知財高裁」という聞き慣れない言葉について簡単な解説をしておきたい。
「知財高裁」は略さずにいうと「知的財産高等裁判所」といい、2004年制定の「知的財産高等裁判所設置法」に基づく裁判所である。
「知的財産」は特許権・実用新案権・意匠権・商標権という権利をいう。大変大雑把な解説をすると、技術であれ名前であれデザインであれ、いわゆる「アイデアの独占を認め他人が使用できなくする権利」という理解で良いと思う。国内的にもそうだが、現代の国際社会で、この知的財産権は大変に重要な権利であることは間違いなく、この権利を迅速的確に保護する要請が高まり、司法制度改革の中でも議論・提言され、また政府部内に知的財産戦略会議が発足して知的財産基本法が施行される等の流れの結果、上記の「知的財産高等裁判所設置法」が制定されたのである。
一般の民事行政紛争は、県庁所在地(北海道は札幌他2市)にある地裁の一審、7つある高裁の二審、1つの最高裁の三審という三審制を原則としているが、知的財産権についてはその専門性と迅速保護の要請から、特別な形になっている。すなわち知的財産の紛争について色々な紛争類型があるが、特別な案件については知財高裁を一審、最高裁を二審とする二審制にし、更に内容によっては一審を東京地裁と大阪地裁に限るとされているのである。これ以上は一般人向け解説としては細かくなり過ぎるかも知れないので、更に詳細を知りたい方は、「裁判所」のホームページをご参照願いたい。
今回の「ひよ子」事件は、このうちの二審制の対象となったものである。アイデアの法的保護を考えている実業家の方々は、この面の知識を備えておいた方が良いと思われる事件である。