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福岡市弁護士甲能ホーム判例解説インデックスさいたま地裁の裁判員裁判、首都圏の3人の不審死を殺害と認定

判例解説インデックス

2012.04.14(土)

さいたま地裁の裁判員裁判、首都圏の3人の不審死を殺害と認定

被告人に死刑判決

さいたま地裁の裁判員裁判は、13日、殺人などの罪に問われた女性被告人(37歳)に対し、検察側の求刑通り死刑の判決を言い渡した。被告人は殺人罪については無罪を主張していたが、判決は被告人が練炭自殺に見せかけて3人を殺害したと認定した(朝日13日夕刊)。

本件は、被告人が殺人をいずれも全面否認していること、状況証拠しかないこと、裁判員裁判であること、裁判員裁判としては異例の長期の100日にわたる日程などで注目されていた。

状況証拠とは、法律用語としては間接証拠といい、直接証拠(犯罪を直接構成する事実)を推認(推測)させる証拠のことである。例えば、殺害現場の目撃証言などが直接証拠であり、殺害時刻近くに被告人を見かけたという目撃証言は間接証拠である。当然、直接証拠があれば犯行は認定しやすいが、直接証拠が見当たらない場合でも間接証拠を積み上げることで犯行を認定できることは最高裁が認めている。しかし、間接証拠はそれだけでは証明力が弱いので、様々な間接証拠の存在とその証明力の相乗作用から直接事実が確実に推定される場合に限られることになっている。

新聞報道によると、本件では、3人に自殺の動機がないこと、自殺に使用したとされる練炭や睡眠薬を入手した形跡もないこと、他方、被告人には3人を殺害する動機があったこと、被告人が殺害に使われた練炭などを購入したこと、3人が死亡する直前被告人が最後に会ったこと等の間接事実から、殺人を認定したようである。

判決文本文に当たってみないと、その推認にどこまで説得力があるのかはっきりしないが、この様な事例のときに素人の常識を生かそうというのが裁判員制度の本旨であるから、正に制度そのものが問われた裁判ということが出来よう。