向井万起男さんと言えば、日本初の女性宇宙飛行士向井千秋さんのご夫君である。最初、そちらの方で有名になられたが、綴られる軽妙なエッセイでも有名になり、女性宇宙飛行士のダンナという肩書は不要になられた。
本書は、数字が大好きと仰る向井氏が数字に関して書かれたエッセイをまとめたものである。最初の前書きからして、自分は「万」起男という名前だが、姉が「千」歳で、妻が「千」秋で、「千」と「万」という数字に縁があることから説き起こす。
扱う数字は種々雑多、科学から迷信から文化・風俗にいたるまで何でも数字に絡めてエッセイにしてしまう。よくもまぁ、これだけの数字に関する雑学を身につけておられるものだと感心してしまう。著者が大リーグの大ファンだということはご存知の方も多いと思うが、その話題も多い。
また、語り口も、殆ど口語体で、普通に喋っているものを文字にしたという感じで大変読みやすい。その「芸風」は中々巧緻である。軽く書いているようでいて、1編がほぼ起承転結の構成になっていて、軽口エッセイの教科書みたいな気がしてくる。
堅苦しい法律の本や重厚なドキュメンタリーなど読み疲れたときに、本書は一服の清涼剤となるであろう。