裁判員裁判ではない職業裁判官だけが裁判を担当する従前の制度では、大体の求刑相場があり量刑相場もある程度はあった(例えば一人殺せば10年等と言われていた)。もちろん裁判官にも個性があり、厳しい量刑をする裁判官もいたし甘い量刑をする裁判官もいる。しかし、大雑把な相場はあり、特に求刑と判決の関係は、実刑を科す時は求刑意見の7〜8割が判決の量刑、執行猶予を付けるときは求刑意見のままが判決の量刑、というのが大体のながれだった。
そこで、これまで報道されている裁判員裁判の量刑をみると、1件目が求刑16年に対して判決15年、2件目が求刑6年に対して判決4年半、3件目が求刑15年に対して求刑15年のまま、と報道されている。
未だ3件なので、裁判員裁判の量刑傾向を云々できる件数ではないが、私の正直な感想としては、やや重いかなという気がする(4年半の件を除いて)。
そもそも相場を議論すること自体おかしいという議論はあろう。しかし、被告人は裁判体を選べない。不謹慎な言い方をすれば当たり外れがどうしても出てくるのだ。そして、その当たり外れは統一的職業訓練を受けた裁判官より抽選で選ばれる裁判員の方にバラツキが多いに違いないことは間違いない。これが私が裁判員裁判に対して懸念していたものの主要なものの一つである。
裁判所もその辺を意識して、量刑データベースを整備して裁判員に示しているようだが、統計上の量刑数字と、今目にしている被告人を懲役何年にするか更には死刑台にまで送るかを具体的に考えることとは極端な落差がある。死刑1件と目の前の斬殺死体の写真まで見せられた被告人の罪状とは、そうそう簡単に結びつくものではなかろう。初体験でインパクトが大きいほど重罪化へ傾くのではあるまいか。
今後の傾向を見守りたい。